Khish No.004 Cordovan Derbyの完成

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今回はキッシュの革靴のNo.004の完成記事です。

▼No.003の記事はこちら▼

目次

製作動画

①アッパーを縫う
https://youtu.be/O6lYKuw4eNg

②木型に吊り込む
https://youtu.be/NRODjGFX5O8

③中物を詰める
https://youtu.be/-BdLTljJM68

④出し縫いをする
https://youtu.be/9eV7T0JKIIs

⑤コバを磨く
https://youtu.be/lw4PSQKQ70M

⑥ヒールの積み上げ
https://youtu.be/D_7oOpgS5c0

⑦ソールの仕上げ
https://youtu.be/VRCC_q2onIs

完成の動画

完成レビュー

Khishの4足目はコードバンを使ったエプロンダービーです。

Khish No.004 Cordovan Fully hand-stitched Derby

新喜皮革のオイルグレージングコードバンをアッパーに使い、バンプ、カウンターともにスキンステッチを縫い巡らせた手間のかかるデザインです。

デザインパターン自体はとてもシンプルでバンプ(前方)とカウンター(後方)の2パーツ構成になっています。

つまりスキンステッチは全て飾りであり、革の接合等には完全無関係という無駄を極めたデザインです笑

手染めコードバン

さらにアッパーは元々薄めの黄色に近い茶色だったものを手で染色し、グラデーションになるよう仕上げています。

ハンドステッチ
グラデーションと太めのステッチ

バンプパーツのステッチはY字に縫っています。糸はアイリッシュリネンの単糸を4本撚って松脂とロウを塗り込んでいます。

少し太めで毛羽立ちのある糸が手作業の雰囲気を醸し出します。

ヒールまで伸びたステッチ

つま先のY字ステッチから伸びるようにカウンターパーツまで縫い目は走り、ヒールまでつながっています。(縫い目自体はつながっていませんが、視覚的につながりを持たせたデザインです)

ロングヴァンプデザインの靴のように縫い目のラインが後ろまで走っています。

記事一枚目の写真のように上から見ると縫い目が靴の周りをぐるっと囲むようなデザインになっていることが分かります。

パイピング

デザイン的にも色合い的にもカジュアルなので、それに合わせて履き口回りはパイピングで処理。

個人的にパイピングの雰囲気はかなり好きで今回6足中4足がパイピングです。

革の端に丸い縁がつくことでかわいらしくカジュアルな雰囲気が出ます。

シームレスヒール

コードバンはキップやカーフに比べて硬くて厚みがあるので吊り込みが若干難易度高いのですが、仮吊をあらかじめしっかり行うことでシームレスヒールも問題なく作ることができました。

ナチュラルなソール

底付けはシングルウェルト、シングルソールでウエスト部分外側が角コバで内側のみべヴェルドウェストという仕様です。

ソールステインでナチュラルに革の質感を生かした仕上げに幸菱の焼き印を押しました。

出し縫い

アウトソールの縫いはspi10、約2.5mmのステッチをかけくっきりと目付をしてあります。

カジュアル感とドレス感の最も良いバランスが出るのがこのspi10だと思います。

シューツリーには茶色い帯紐と真鍮リングをつけています。この帯紐の稲穂のような網目模様が、靴全体に施したステッチとマッチしてどこか「祭り」を感じさせます。

祭り感が漂う

ツリーは靴と同じくグラデーションになるように染め、亜麻仁油を何度か塗り込んで仕上げています。

シューツリ―
インソール

この靴のサイズは

26.5cm UK8

程度です。

専用の靴箱

靴袋と靴箱も靴のイメージに合うように作りました。全体的に茶色でまとめ、袋や箱は茶色の濃淡を変えています。

感想

この靴は6足の中で最もアッパーを縫いあげるのが大変でした。

とにかく手縫いが大変で、この靴のおかげで首と肩がやられ、マッサージに行かざるを得ませんでした。笑

コードバンという素材がかっこよく生きる使い方は色々ありますが、大きく二つ

  • 一枚で大きく使うプレーンタイプ
  • 手縫いをして革の表面をボコボコ盛り上げるタイプ

があるとおもっています。今回の靴は後者に当たります。

コードバンはツヤがやはり特徴的ですが、革の中に糸が通り、その部分が盛り上がるとコードバンのツヤと肉厚感を強調しキラキラ輝きます。

スキンステッチというのは非常に難易度が高い技術でありまして、技術の高い人であれば、もっと正確に、もっと革の表情を出せるような縫い方ができるはずです。

まだまだ僕の技術では及びませんが、デザイン、木型、色味を組み合わせることで迫力のある靴になったと思います。

ちなみにコードバンで手縫いというとやはり有名なのがAldenのNST(Norwegian split toe)ですが、この靴はそのNSTのオマージュ的要素もイメージしています。オールデンがもっとドレスな靴を作ったらどうなるのかと。

木型や全体の雰囲気はSaint Crispinあたりもイメージしています。好きなんですよね。

といった感じで僕の作る靴は完全に僕の趣味です。今までいろんな靴を見て、履いてきた中で、どんなものが好きかというのは自分で理解しています。

その「好き」を形にする作業が僕の靴作りですので、気に入っていただける方がいらっしゃるなら、バイト代をつぎ込んで靴コレクションをしていたかいがあったというものです笑

コードバンは履いてエイジングするとがらりと雰囲気が変わってきますので、この靴の今後も楽しみです。

それではまた。

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