こんにちは。かわぐつのケンです。
この記事では今回製作したNo.017 Chestnut Italiaの完成レビューをお届けします。
今年のナンバーズコレクションは、展示会において展示し気に入った方がいらっしゃれば先着順でその場でご購入いただけます。(会期中は展示し、終了後ご郵送します)
No.017 Chestnut Italia
No.017
Chestnut Italia
¥385,000
サイズ : 26cm UK7.5相当
アッパーマテリアル : Annonay Vegano calf /Horween shell cordovan
ソール仕様 :
ハンドソーン製法
インサイドベヴェルドウエスト
シューツリー : 3ピース
こちらの靴の製作動画はJapanese IndustryというYouTubeチャンネルに長編3部作として公開されていますのでご覧ください。
No.020製作の経緯
ナンバーズコレクションには1足ずつストーリーやコンセプトがあります。
このNo.017 Chestnut ItaliaはKhish the Workのこれまでの流れやストーリーの中から生まれた靴です。
昨年、Made to Orderラインを開始し、ありがたいことに大変ご好評で、休むまもなく製作を進めています。
その中で昨年の展示会から非常に人気の高かったモデルがChestnutというエプロンフロントダービーです。
この伝統的なデザインは僕自身非常に好きなデザインで、それをKhishの木型に落とし込んだChestnutもとても出来が良く気に入っていました。
お客様もChestnutを気に入ってくださる方が多く、最初のMTOオーダーの一番人気モデルとなったのです。
その後もChestnutのオーダーは続き、MTOの代表的なモデルとなっています。
そこでMTO1周年を記念するという意味でもスペシャルバージョンのChestnutを製作したのが
今回のNo.017 Chestnut Italia というわけです。
デザイン解説
元々Chestnutのエプロンフロントダービーとしてのデザインは、イギリスのカントリー系の靴や、イタリアのクラシックな靴に見られる伝統的なものです。
Chestnutのデザインをさらにイタリアクラシックに近づけるため、No.017は基本形はChestnutと同じくしながら、木型や型紙など各所で異なっています。
イメージは伝説的なイタリアの工房Gatto、そしてそれを引き継ぐMercurioやMessinaのイメージです。
イタリア靴といえば華奢で色鮮やかでスタイリッシュな靴を思い浮かべるかもしれませんが、実はイタリアンクラシックはその真逆。どっしりと低く構えた重厚感と手作業感が特徴です。
No.017の大きな特徴の一つが二種類の革を使ったコンビシューズであることです。
しかもカーフとコードバンという異素材の組み合わせになっています。
そのためChestnutとはエプロン部分の縫製の仕方に違いがあります。
Chestnutのエプロンは一枚の革を摘み縫いする、いわば飾りの縫いですが、No.017はコードバンとカーフを繋ぎ合わせるための構造的な縫いであり、それをスキンステッチで行っています。
スキンステッチは革の厚みの中に糸を通して縫い合わせる方法で、No.017ではそれを縫い目の両側から行うパラレルステッチになっています。
イタリアクラシックではエプロン部分の縫いをかなり細かく縫う靴が見られるため、そのように縫い上げています。
ホーウィン社のコードバンの色味はBourbon
ベガノカーフと大きくは違わないその絶妙な色味の差がこの靴の玄人感を増している気がします。
またトウシェイプはChestnutと大きく異なり、どっしりとしたスクエアトゥです。
こういった形状は僕自身昔はあまり好きではありませんでした。どうしても野暮ったく感じがちだったのです。
しかしたくさんの靴を見て履いて触れてくる中で、どっしりとした強めのスクエアトゥの不思議な味わい深さというか、大人の余裕のようなものを感じるようになりました。
それは単純に僕自身が年を重ねただけかもしれませんが、こういったスクエアが苦手な人でもぜひ実物をご覧になって独特の立体形状を眺めていただきたいと思います。
ソールステッチはあえて細かく縫わず少しドレスシューズのなかでは粗目の仕上げになっています。
イタリア靴はアッパーの手縫いの細かさに比べてソールのディテールはそれほど細かくない傾向にあるように思います。それが靴全体の繊細になりすぎない重厚感、オーラに繋がっているかもしれません。
またソールはインサイドべヴェルドウエストとなっています。内側のみソールをアッパーに密着させ絞り込むベヴェルドウェストで、外側はスクエアウエストです。
またアッパーはヒールの内側に革の継ぎ目がありますが、これは裏から革の厚みの中を縫うシャドウステッチ
糸が革の中を通った凹凸だけが浮き出て見えます。
こういった手法はイタリアクラシックで見られることはそう多くはないですが、スペシャルバージョンとして取り入れました。
シューツリーは杖のような持ち手付き3分割のものを製作しました。
シューツリーの風合いも相まってすでにビンテージシューズのような奥行きのある重厚感が漂っています。
ナンバーズコレクション過去作品の中でも特にクラシックな靴が完成しました。
スペシャルバージョンのChestnut Italia
こちらの靴はMTOラストとトウシェイプは異なるもののボディ部分の形状は共通していますのでフィッティングシューズにてサイズ感、歩行感をお確かめいただけます。
ナンバーズコレクションならではの僕の好みがガンガンに溢れ出てしまっていますが、この靴を気に入ってくださり、ご購入希望の方いらっしゃいましたら展示会に足をお運びください。先着順となりますのでご来場時既に売り切れの場合もあるかと思いますがご了承ください。
こちらの靴は展示会で販売後、展示会期中は会場にて展示させていただき、終了後郵送となります。(販売後はお手を触れないよう展示します)
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