こんにちは。かわぐつのケンです。
この記事では今回製作したNo.019 Braided slip-onの完成レビューをお届けします。
今年のナンバーズコレクションは、展示会において展示し気に入った方がいらっしゃれば先着順でその場でご購入いただけます。(会期中は展示し、終了後ご郵送します)
No.019 Braided slip-on
No.019
Braided slip-on
¥374,000
No.019製作の経緯
ナンバーズコレクションの中で、両足製作しサイズのある靴はワンデザインワンサイズのため、ナンバーズコレクションそのものでサイズ感を確かめることができません。(展示中に履きシワ等を入れないため)
そのため、サイズを確かで頂くにはフィッティング用シューズを用います。
これまでの展示会では紐靴のフィッティングシューズのみだったため、紐靴のナンバーズコレクションしか制作してきませんでした。
2024年6月からローファーのフィッティングシューズを製作したことにより、ローファーのナンバーズコレクションが製作可能となりました。
こちらは記念すべき第一作となります。
No.019 Braided slip-onの解説
アッパーの革はイルチア社ラディカ(ミュージアムカーフ)のグリーンです。
定番カラーとしてAlloroという緑色があるのですが、今回使用したカラーは定番とは若干違う色味です。
Alloroが少しカーキに近い深緑であるのに対し、今回のグリーンはもう少し彩度の高い緑らしい深緑です。
どちらの色もかなり深い色合いで、室内で見るとほぼ黒、太陽の強い光を当てると奥にある緑が顔をのぞかせるような魅力的な色です。
個人的に緑のアイテムというのはどこか特別、高貴な印象を持っています。そういったイメージに加え、格式高い式典等では軍服に編み込まれたロープの飾りをつけること、さらにローファーといえば優勝したWorld championshipsの課題がフルサドルローファーでしたので、それらの意匠も少し汲むような形で、編み込みを主題に置くこととしました。
名前はNo.019 Braided slip-onです。
バンプパーツにエプロン(U字形状)を持つデザインの場合、つまみ縫いで革を盛り上げたり、スキンステッチで革に模様を出したりと、革でU字を表現する場合が多いです。
この靴は革の表情ではなく、編み込んだ糸そのものをデザインラインとしています。
この編み込みはもちろん全て手縫いで、糸の太さ、糸の通し方、穴の間隔の試作を重ね、一本の糸を使いながらも三つ編みの様に見えるものにしています。
また、編み込みはU字ラインにとどまらず、踵から履き口を囲む様に縫ってあります。
これらの編み込みは機能的ではなく装飾用ですが、踵の編み込みだけは明確な役割があります。
この靴は踵センターにもU字ラインにも革の継ぎ目はなく、完全一枚革の様に見えます。
完全一枚革のスリッポンというのは技術的に可能は可能ですが、革にかなりの無理を強いるため、実用靴として個人的にはあまりおすすめしません。
ただ、継ぎ目のない靴というのはどうしようもないロマンを感じるのも事実
この靴は実際は二枚革ですが継ぎ目を隠す工夫を施しています。
それが踵の編み込みです。
通常革同士を繋ぎ合わせるミシンステッチというのは一本線が入るだけで革の断面はそのまま見えてきます。
編み込みの場合縫い目に幅ができるため、その幅を利用して編み込みの下に革の断面を隠してしまいました。
踵の編み込みは装飾であり、革同士を繋ぐステッチそのものであり、断面を隠すものでもあります。
ソールはアッパーのミュージアムカーフに合わせて、ムラ染めしました。
また、つま先には真鍮プレートを装着
緑と金のコントラストはとても高貴な印象が漂います。
シューツリーは木目を生かしたブラウンの2ピースヒンジ式
八ヶ岳の工房は森の中にあるため、実は工房建設時には緑と茶色という色合わせも少々こだわったポイントです。
No.019 Braided slip-onもその延長線上にあります。
この靴は一見シンプルながらも、実はディテールに気の狂う様な手間がかかっているという、ある意味もったいなく、逆にいえばとても贅沢な靴となっています。
自分しかわからない、だけど、だからこそ気分が上がるような靴に仕上がっているはずです。
是非実物をご覧に展示会へ足をお運びいただけると幸いです。
ナンバーズコレクションならではの僕の好みがガンガンに溢れ出てしまっていますが、この靴を気に入ってくださり、ご購入希望の方いらっしゃいましたら展示会に足をお運びください。先着順となりますのでご来場時既に売り切れの場合もあるかと思いますがご了承ください。
こちらの靴は展示会で販売後、展示会期中は会場にて展示させていただき、終了後郵送となります。(販売後はお手を触れないよう展示します)
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