革靴のハーフラバーとスチールは付けるべきか?

こんにちは、かわぐつのケンです。 靴職人です。

今回は靴職人の視点から見た、ハーフラバーやスチールについてまとめました。これらは、靴の耐久性や性能向上を目的として広く使われているものです。

今回はハーフラバーやスチールを装着するとどのようなことが起こるのかをご紹介したいと思います。

装着・未装着ともにメリットとデメリットがありますので、ぜひ参考にしてみてください。

個人的にはどちらも有効な選択肢だと考えています。

目次

ハーフラバーについて

ハーフラバーは、靴底に薄いゴムを貼る方法です。ゴムの厚みは一般的に1.8mm程度で、メーカーや種類によって異なります。

レザーソールの接地部分に対してのりで接着することが一般的な方法です。

レザーソールにハーフラバーを装着

メリット① 防水性・防滑性

防水性や滑り止め効果が得られ、雨の日や滑りやすい路面での使用に適しています。

ゴムはグリップ力があるため、雨の日に濡れたタイルなどの上を歩いても、レザーソールと比較すると滑りにくくなります。


また、ゴムは水を通さないため、靴底から水が侵入することを防ぐことができます。

特にマッケイ製法の靴では防水効果が顕著です。マッケイ製法の靴はソールから靴の内部まで構造的に穴が空いているため、それを塞ぐことで水の侵入を止めることができます。


総じて雨天に耐性が生まれることがハーフラバーのメリットです。

メリット② 耐摩耗性

ハーフラバーは、摩耗の防止に有効です。

ラバー素材は粘りがあり、レザーよりも摩擦に強く、摩耗を遅らせる働きがあります。


定期的に貼り替えることで、靴の寿命を延ばすことが可能です。

ただし、ハーフラバーを貼り直す際、しっかりと接着するために、ソールの表面を削る必要があります。

これを繰り返すことでソールは薄くなっていくため、貼り直せる回数に限度がある点には注意が必要です。

デメリット① 屈曲性

ハーフラバーを貼ることで、ソールの厚みや屈曲性に影響があります。

レザーソールの場合、履き続けることで革が足に馴染み、履き心地が良くなっていく、また革底ならではの歩き心地、地面への接地感を楽しめるという特徴があります。

ハーフラバーを装着した場合でも、ソールのメインとなる部分はレザーであるためその特性は無くなりませんが、ソールの屈曲性や足馴染みの感覚を多少損なう恐れがある点に注意が必要です。

デメリット② 審美性

新品未使用時のレザーソールではツルッとした美しいソール面の仕上がりを楽しむことができます。

均一に染められ磨かれた光沢のあるソールや、出し縫いを隠すヒドゥンチャネルなどは、職人の手仕事を感じられ、革靴を眺める上で美しさを楽しむことができるポイントの1つです。

ハーフラバーはソールの多くの面積を占めるため、靴底のレザーの表情は楽しみにくくなってしまいます。

より実用的で道具感のある見た目となります。

美しく仕上げられた半カラスのレザーソール

スチールについて

スチールは、つま先部分に鉄のプレートを装着する方法で、トゥスチール・ヴィンテージスチールとも呼ばれます。

このプレートは、摩耗防止の目的で装着され、つま先先端のソールの耐摩耗性を高めることができます。

鉄製の他に、稀に真鍮や銅などの金属を用いる場合もあります。


装着方法はネジ留めが一般的で、交換も可能ですが、あまりお勧めはしません。

理由としては、同じ穴をそのまま使うとネジが緩くなって取れやすくなるからです。交換する場合はプレートの大きさを変える、別メーカーのものにする等何らかの工夫が必要。

プレートの厚みはおおよそ1.5mm程度で、ソールをスチールの厚み分削って埋め込むように装着するケースが多いです。(ソールを削らずに上から装着するタイプもあり)

レザーソールにスチールを装着

メリット① 削れ防止

スチールを装着する一番のメリットはつま先の削れ防止です。

レザーソールの靴では、つま先の摩耗が特に早く進みやすいのが特徴です。

歩行動作の中でに前に進むために、つま先で地面を蹴り出す動作があります。その際ソールの先端部分は地面との摩擦をより大きく受けます。

特に履き下ろしたての靴でソールがまだ馴染んでいないものは、摩耗が進行しやすくなります。


スチールは摩耗に対する防御力が極めて高いことが利点です。

ソール面で最も削れやすいつま先に、削れにくいスチールを装着することで、摩耗によるダメージを防ぎ靴を長持ちさせます。


ソールやウェルトの交換自体は可能ですが、工期は長く修理金額も高額です。

なので、鉄という硬い素材を装着することで、なるべくつま先が削れにくくすることは、修理までの靴の寿命を延ばす上で有効であると言えます。

削れたつま先 ここまで削れると早急な修理が必要

メリット② かっこいい

完全に主観ですがスチール装着は靴の道具感をより高めるかっこよさがあるような気がします。

もちろんレザーソールのままも美しいですがスチールがつくことで高まるデザイン的な堅牢さ、みたいなところもあると思います。

デメリット① ソールの歪み

スチールを装着した靴は使用していくうちに、つま先のソールが上向きに歪んでくることがあります。

先述したようにつま先は歩行動作の際に大きい摩擦を生じるとともに、体重を受け止めてもいます。

その力によって硬いスチールに押しつけられる形でつま先のソールが上方に若干歪みます。(


ただし、歩き方や靴の種類、作り方によって歪みが起きない場合もあるため、必ず発生するわけではない点に注意が必要です。

デメリット② スチールが鋭利になる

装着直後のスチールの断面は角が立たないように仕上げられていますが、履いているうちに摩擦によってスチールが鋭利になることがあります。


そのスチールが付いている革靴を履いて歩いている際に、反対足の靴の内側を擦ると切り傷を付けてしまう可能性も考えられます。


普通に歩いていれば過度な心配は不要ですが、歩き方の癖や突発的によろけた場合などにそのような事態が発生することがあるかもしれないということは言えます。

また床を傷つけるというデメリットも考えられます。

基本的に靴で入ることのできる場所に使う床材というのは、それ用に固く作られているため簡単に傷がつくわけではありませんが、レザーやラバーよりは傷をつけやすいことは確かです。(それを言えばかかとに釘を打ってある靴も同じですが)

デメリット③ 音が気になる

階段を登る際や、地面に足をするような動きをする場合はカチカチ、ジャリといった音がすることがあります。

これも歩き方や靴の形状によって変わります。

スチールの代替案 トゥラバー

実はスチールのデメリットを解消し、つま先レザーソールの保護にもつながる方法があります。

それはスチールではなく、つま先部分にのみゴムを貼る方法です。

ゴムは柔らかいため変形は防げ、鋭利になることもなく、音もしません。

またレザーのままよりは確実に耐摩耗性が上がります。

一つ欠点があるとすればあまりカッコよくないこと(個人の主観です)。

気になる方はこの修理方法も調べてみてください。

よくある質問

ここからはハーフラバーやスチールについて、よくいただく質問について靴職人の視点からいくつか回答していきます。

Q1.ハーフラバーを付けると蒸れるの?

A .変わらないと思います。

「レザーソールの場合、靴底から湿気が逃げるため蒸れにくい。 だけどハーフラバーは水分を通さないので靴の中が蒸れやすくなってしまう。」

このような意見を耳にしたことがある方もいらっしゃると思いますが、個人的には不要な心配だと思います。


まず果たしてどれほど靴底から湿気が抜けるのかについてですが、レザーソールの状態においても靴底から抜ける湿気はほぼ0と言えるほどありません。(科学的に検証したわけではありませんので悪しからず)

靴の製作過程においてソール内部には強力な接着剤を満遍なく塗布します。これは水分を通しませんし、インソール(中底)は3~6mm の厚み、レザーソール(本底)は4~6mmの厚みがあるわけで、それぞれに水分を貫通させようとするには水に何時間も浸す必要があります。

また、仮に靴底から湿気が抜けるのであれば、脱いだ靴の底はわずかに湿っているはずですが、(濡れた地面を踏んだ場合を除いて)そのような場面に遭遇したことは僕はありません。

よって、「湿気対策のためにハーフラバーを貼らない」ということは考えなくてもよいと思います。


Q2.スチールを付けると足音がうるさくならない?

A .あまり心配いりません。

「つま先にスチールを付けると、歩く時にカチャカチャと音が鳴って目立ちそう」

と考えている方もいらっしゃると思いますが、基本的には心配は不要です。

歩行時においてスチールが付いているつま先が地面と触れるのは踏み出すときなので、たまに「カチッ・シャッ」というくらいのものでしょう。

また接地する際も、スチールが付いているつま先ではなく、かかとから着くため、スチールによる音は鳴りません。

映画などで革靴を履いている人が「コツコツ」と足音を出して歩いているシーンがありますが、あれは映像作品の効果音です。

万が一普段から普通に歩いていて、つま先のスチールが大きく鳴る歩き方をしている場合は、歩き方を見直してみてもよいかもしれません。

Q3.スチールを付けるときに出し縫いの糸を切っても大丈夫?

A .大丈夫です。

まずオーダー靴では、あらかじめスチールを付ける依頼があった場合は、なるべく糸を切らないような加工をします。

既製靴や既に履いた後の靴にスチールを付ける場合では、確かに加工時に出し縫いの糸は切れますが、それも基本的には心配は不要です。

出し縫いの糸は布の縫い目とは異なり、糸が革の中に入っているという状態が摩擦力を生み、それだけで意味があると言えます。

またフルハンドメイドの場合(手縫い)はそれに加えて、出し縫いの構造上、縫いの一目ごとに固結びがされているようなものなので、つま先の糸が一部分切れたことでウェルトとソールがすぐに剥がれるということはありえません。

中には切れた糸が抜けてくるという意見もありますが、意図的に抜こうとしなければなかなか出し縫いの糸は抜けませんし、自然に糸が抜けてきたりソールが剥がれてくる頃にはオールソールの時期ではないか、というのが僕の考えです。

また修理方法としてつま先の出し縫いのみ縫い直すという方法もあります。


これらは靴職人さんや革靴を履く人の考え方に左右されるところなので、あくまで一意見として参考にしてみてください。

まとめ

ハーフラバー

・摩耗防止や滑り止め効果が高い
・雨や濡れた路面での安定性向上
・繰り返し貼り替えが可能
・ソールの感触や屈曲性に影響する場合もある


◯ スチール

・摩耗に対する防御力が非常に高い
・つま先は靴底で一番に削れやすいポイント
・使用すると鋭利になる点、靴の変形リスクも存在する点に注意


ハーフラバーとスチールは併用も可能

靴の用途や好みによって、選択肢は変わります。耐久性と実用性を最優先するならハーフラバーやスチールは有効です。逆に、歩き心地の感触や見た目を重視する場合は、シンプルな状態を保つのも良いでしょう。

また、ハーフラバーとスチールは併用も可能です。この組み合わせは、耐久性と実用性を兼ね備え、長く靴を快適に使うための工夫です。

気になる方は、ぜひ一度試してみてください。


YouTubeではハーフラバーとスチールについて、より詳細に紹介しています。

ぜひそちらもご覧ください!

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