Khish No.003 猪ブローグの完成

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間が空いてしまいましたが、今回はキッシュの革靴のno.003の完成記事です。

No.002の完成はこちら▼

目次

製作動画

①アッパーを縫う
https://youtu.be/TriZf92A2Yo

②木型に吊り込む
https://youtu.be/atN8ykZFIYM

③すくい縫いをする
https://youtu.be/poMNhfZ5DT4

④出し縫いをする
https://youtu.be/N8lLAr9dgWk

⑤ソール仕上げと銅プレート装着
https://youtu.be/i9gLS7vTR44

完成の動画

完成レビュー

デザインは外羽根のフルブローグ。

full brogueというとウィングチップでメダリオン付きのものが主流ですが、こちらはつま先のパーツがU字でメダリオンなしのデザインです。

Khish No.003 猪Brogue

これも多分フルブローグと呼びます。(デザインは多種多様すぎて、変形させたものがどこまで伝統的な呼び名の範囲に収まるのかはわかりません)

アメリカビンテージではUウイングと言ったりしますが、英国老舗ではクレセントブローグ(Crescent Brogue:三日月ブローグ)と呼ぶこともあるそうです。

Foster & Son
CRESCENT BROGUE - Foster & Son
Fosterのサンプル

穴飾りは親穴のみの連続で革の端はギザギザにカットしてあります。(ギンピングまたはピンキングと呼ぶ)

なんといっても特徴はアッパーの革です。

日本の広島の方で害獣駆除された野生の猪を革を使っています。

表情豊かなアッパー

表面の質感が独特で、毛穴とシボ感がありマットな表情です。

似た素材だとピッグやペッカリーがありますがそれともまた違った質感で、何とも言えない迫力を醸し出しています。

革はタンニン鞣しで少しオイルを含んでいます。厚みはしっかりあり、コシがありつつもしなやかで足なじみがよさそうです。

野生の猪革

野生の猪のため傷がちょこちょこあります。そして一頭の革の中でも部位による質感の差が大きいです。

上記の画像のクオーターパーツ(羽根から踵にかけての部分)は猪の首のあたりを使いました。シボ感が大きく柔らかいです。

シームレスヒール

そして踵のパーツはお尻の方の繊維が詰まった部分を使いました。シボ感は少なく表面が比較的平滑で光沢感があります。

同じ靴のなかでもそういった革の質感の違いを楽しめるのもこの革の面白さです。

底付けはダブルウェルト、ハーフミッドソールです。

ダブルウェルトは踵まわりもウェルトを縫い付け、出し縫いを行います。

ダブルウェルト

見た目、履き心地ともに安定感がでます。

また、ハーフミッドソールにすることでダブルソールほど堅牢感は出さずに、ドレスとカジュアルの中間を狙ったような重厚感を目指しました。(前半分だけダブルソール)

ハーフミッドソール

ウェルトにくっきりとつけたファジングはspi8、つまり一目3mmほどのステッチです。

少し粗めのピッチなのでソールの存在感が際立ちアッパーの素材感とバランスを取っています。

粗めで迫力のある目付

ソールはアンティーク家具のような木目風仕上げを施し、つま先には銅のチップを装着しています。

アンティーク家具のようなソール

一般的には削れ防止のためスチールをつけますが、この靴の質感や雰囲気に合わせて銅を選択しました。

銅板をたたいて模様をつけ、切り出してソールに真鍮ビスで固定しました。

つま先の銅チップ

個人的に槌起銅器のボウルややかんの表情が好きで、今回の猪革の表情や色合いにはそれがぴったりだと閃き、手作業で作りました。

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ところで金属には加工硬化という現象があります。針金を何度も折り曲げると最初はぐにゃぐにゃ曲がっていたのにそのうち折れてしまいますよね。

金属は折り曲げたり叩いたりすることで構造が変化し硬化するらしいです。針金の例でいうと、最初は柔らかかったものが加工を繰り返すたびに硬くなり、終いには折れてしまうと。

槌起銅器のやかんのボコボコは単なる模様ではなく、銅板を立体に変形させると同時に硬化させるという意味を持っているらしいです。

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つまり今回の銅チップ、toe copperは単なる模様ではなく、叩くことで加工硬化を起こし、削れ防止の機能を強化しているのです。一応。

(実際この程度ではほぼ変わらないとは思いますし、スチールの硬さには到底及ばないと思います笑)

緑のシューツリ―

シューツリーは森を駆け巡る野生のイメージや日本の抹茶的なイメージから緑に染めました。

金具はこちらも自作の銅パーツ。

自作の銅パーツ

切って曲げて、最後に燃え盛る炎の中に突っ込み酸化被膜を作って変色させました。

紐は同じくアッパーの猪革を縫って作り、先端には害獣駆除された猪の牙を付けました。

靴本体だけでなくシューツリーも含めて一つの作品として仕上げるというKhish the Workの製作コンセプトがよく出てくれました。

猪の牙

この靴のサイズは

25.5cm UK7

程度です。

専用の靴箱
緑の靴箱とえんじ色の靴袋

感想

正直に言いますと今回製作した6足の中でこの猪ブローグが僕の中では一押しです。笑

同じデザイン同じ革、色違いで自分用に作ろうと思っています。

靴を作っていると色んな要素がバチっとパズルのように組み合わさる感覚ってあるんですよね。

まさにこの靴はそんな感じでした。おかげでいつにも増して熱が入ってしまい、色々無駄に凝ってしまいました笑

猪革は今回初めて使いましたし、ほとんど靴になっている事例も見かけないのでどのような履き心地なのか、エイジングするのかというのは未知なのですが、おそらく履き込むとマットな質感の革から深みのある光沢感がじわじわ出てきて、オーラがすごいことになる気がします。

作るのも楽しかったですが、今後僕の手を離れてからも楽しみですね。

それではまた。

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (2件)

  • ケンさん、
    展示会お疲れ様でした。
    本当にこの猪ブローグ、最高にかっこいいです!
    もうすでに漂うオーラが好きで、展示会でも猪ブローグばっかり見てしまいました。(もちろん他の靴達もかっこいいですが。)

    履き心地もえげつなくフィットしていて、忘れられないのでオークション頑張ります。

    これからも頑張ってください!

    • ありがとうございます!
      猪ほんとに出来が良く、人気も高かった靴でした。
      そうやっていろんな人の感想を聞けるのも展示会ならではですね!
      オークション未知ですが、機会があればぜひよろしくお願いします!

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