革靴に関するおはなし。 第1回-② 革の伸びについて

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毎週火曜日に私、菱沼乾と

動画にもたびたび登場している、私が靴を作っている中学からの友人、二階堂とで行う

「革靴に関するおはなし」を投稿しています。

ざっくばらんに対話形式で投稿させてもらっております。

対話内容についての不明点などコメントしていただければ回答します!

また、トークしてほしい話題などありましたらどしどしコメントください。

できる限りコメントの内容もやっていけたらと思います!

今回は、次回に引き続きビンテージのグレンソンの話から続きます。

H:菱沼(ケン)
N:二階堂


N:昔アンテロープの革靴買ったじゃない?

グレンソン アンテロープ革
https://studiocbr.net/?pid=141614890 より引用

H:ああ、グレンソンのヴィンテージのやつね。

N:そうそう、あれが尋常じゃないくらい柔らかいからさ。

H:確かに、あれ履きこんでもうブカブカレベルになってたよね(笑)

N:履き始めはちょうどいいくらいだったのに、ブカブカになった。

そのあとインソール入れて丁度いいと思ったらまた伸びてまたブカブカになってきてみたいな。

履き込んだ様子

革って伸び続けるとかあるの?革の種類によるとかで。

H:伸び続けることはないよ。吊りこみする時革を伸ばして引っ張って木型に沿わせるけど、その時に完全に伸ばし切ってるわけではないんだよね。ピンと張る部分があって、さらにそこから伸びる部分がある。その伸びる部分を残しておかないと足への馴染みに繋がらないし、引っ張りすぎちゃうと後で縮むこともある。

N:あ、縮むっていうのもあるんだ。

H:そうそう。だから革が伸びきるってことはある。永遠に伸び続けるってことはないよね、当たり前だけど(笑)

革によって伸びる量が変わるってことはある。あの靴に使われてた革は伸びやすかったんだと思うし、原皮の違いやタンニン、クロム鞣しとかの鞣しの違い、仕上げの違いによっても伸び率は異なるはず。
それとあの靴はグッドイヤー製法だから、ハンドソーン製法とくらべて中底が沈みやすいっていうのもあるかな。

グッドイヤー製法のほうが構造上中物、コルクのことね、それが厚くなるから、コルクの沈む分フィッティングの変化は大きいと一般的には言われてる。ここは話すと色々あるみたいなんだけどここでは長くなるから置いとく。

だからアッパーの伸びに中底の沈みもプラスされて、靴の内部が全周広がったことで大きく伸びたように感じたってことはあるかも。

N:なるほどね。今まで作った靴で革が一番柔らかかったのってどれ?

H:うーん、伸びやすさと柔らかさでまたちょっと違うんだよね。

N:違うんだ。

H:しなやかでも伸びない革もあるし、硬いけどビヨーンと伸びる革もある。

N:なるほど。

H:今回の靴は柔らかさはかなりのもの、トップ3に入るぐらいかな。

今回使った革 嶋田悟製革所オイルカーフ

でも今まで、柔らかい革をあえて使ってきたわけじゃないからさ。

N:そうだよね。

猪のほうが柔らかいとかはないの?

H:それはないね、猪はコシがあってしっかりしてる感じ。

N:コシがあるっていうのは、硬くて伸びにくいみたいなこと?

H:いや、伸びにくいとも違う。繊維が密でギュッとしている感じがする。

N:繊維が密っていうのは伸びづらいにも繋がってきそうな気もするね。

H:もちろんそうなんだけど。部位にもよるかな。猪は部位によってはめちゃめちゃ伸びる。

N:そういう部分は今まであまり使わなかったの?

H:そういう部分は猪に限らず靴には使えないから避けて使うね。

N:伸びすぎちゃうからね。

H:そうそう。今回使用した革も柔らかいとか伸びやすいを超えて伸びすぎちゃう部分は使ってない。

それでも今回の革の使える部分と猪を比較したら今回の革のほうが伸びやすかったね。

普段使うアノネイのボックスカーフと比べても今回の革は圧倒的に伸びやすいし柔らかかった。

N:菱沼だったらあのアンテロープの革は使わない?

H:いや、あの靴が革の悪い部分を使ってるわけではないと思う。

N:でも際限なく伸び続けているような気がしちゃうんだよね。

H: 際限なく伸び続けてることはないと思うけど(笑)

その原因の一つとしてはさっきの中底の話もあるし、大量生産の機械吊りと比べて手製靴の手吊りのほうがしっかり吊りこめるっていうのはあると思う。

機械で吊りこむと若干緩い、完璧には木型に沿わせられてなかったり、テンションが弱かったりするということも可能性としてはあるかも。

それと単純にアンテロープの革質が伸びやすい性質がある、とか。

使ったことはないから分からないけどね。

また緩さといっても、アンテロープの靴は自分の足型ではないじゃない?。

N:それはもちろん。

H:そうなると、靴にきつい部分と緩い部分がもともとあって、きつい部分の革が伸びてフィットしてきた結果、緩い部分の緩さばっかり目立つようになった可能性があるね。

N:あー、なるほど。

H:ビスポークの場合全面を合わせるから、緩くなっても全体的にゆとりが出る程度で全体の伸びが1→1.2になるくらいだと思う。

元々足に合っていない靴だと、例えばある部分では0.8(当たって痛い)、ある部分では1.5(足と靴の間に隙間がある)だったかもしれない。その0.8の部分の革が馴染んで1になった結果、きついところとかホールドするところが無くなって全体的にすごい伸びたように感じたのかも。

N:そういう場合、インソールを入れたらまたどんどん伸びていっちゃうんだよね?

H:延々と伸び続けたらもうそれはブラックホールだけど(笑)

N:そりゃそうだ(笑)

H:インソール入れたら伸びすぎた部や沈みすぎた中底を補正できて、全体的に足に馴染んでより良いフィッティングになるかもしれない。

N:また違う部分が伸びてしまう可能性もある?

H:それはあるかもね、今まで伸びなかった場所が伸びる可能性はある。


2回目は以上となります。

次回は、今までのフィッティングの経験について「おはなし」していきます。

是非来週もご覧ください!

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