ウィールと目付ゴテ

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こんにちは。

今回は久しぶりの靴作りネタです。以前こんな記事を書きました。

出し縫いのピッチの意味や糸について自分なりの解説をしましたが、今回はそのこだわりを実現するための道具を解説します。

出し縫いのピッチを決める「ファッジウィール」という歯車状の道具と、それを補完する「目付ゴテ」です。

目次

ウィールと目付ゴテ

Seam detailerとFudge wheel

どちらもウェルトに押し当ててギザギザ模様をつける道具です。

これを使って靴を作るとこのような見た目になります。

ウェルトの目付

製作工程としては、すくい縫いをしてウェルトを縫い付けた靴にソールを接着した段階で登場します。

  1. ウィールをウェルトの上で転がして、ウェルトにギザギザ模様の痕を軽くつけます。
  2. ギザギザに沿って縫います。
  3. ギザギザを深くはっきり入れるために目付ゴテを押し当てます。
  4. もう一度ウィールを力強く転がします。
  5. コバの着色等した後、ロウをつけたウィールを再度転がします。

目付をしっかり入れるために段階ごとに何度かウィールは登場することになります。

目付ゴテは動画で登場しないことも多いですが、基本的に出し縫い後には目付を深くするために使っていることが多いです。(目付ゴテは使わずウィールだけでも一応できます)

▼1と2の工程はこの動画で行っています。

出し縫いのピッチを決める

▼3と4の工程

▼5の工程

ウィールの形状

ウィールは木製のハンドルに金属の支柱がつきその先端に円錐台状の歯車がついています。

歯車はくるくる回ります。そして歯車の細かさがそれぞれ異なります。

下の写真では左から14番、12番、8番、10番、7番と並んでいます。(適当順ですみません)

ウィール

「ウィールの番手」
ウィールのギザの細かさは「spi~番」という数字で表します。
Stitch per Inch(1インチあたりの縫い目の数、つまりギザの谷の数)が例えば10番の場合、
25.4mm(1インチ)÷10=2.54mm  となりギザ一つ分の間隔は2.54mmの細かさということになります。
つまりウィールの番手は大きくなるほど縫い目が細かくなります。

ウィールの歯車

ウィールは円錐台状の回転部分にギザギザが均等に並んでいます。このギザギザの山の頂上部分がウェルトにあたり、出し縫いをするための目印となります。

ギザが等間隔に並ぶ(7番)
細かいギザ(14番)

上の二つのウィールは番手が2倍なので二倍の細かさでギザギザしていることになります。

後から

実際にウィールを使用する際は、熱して使う場合が多いです。

目付ゴテ

目付ゴテは木製のハンドルにL字型の金属がつきます。

目付ゴテ
横から

L字の先端部分の4mm程度に目付をする突起がついています。これを正面からみたところが次の写真です。

先端が二又に分かれている

目付ゴテには二種類ありまして、これは先端が二又に分かれているタイプです。

ちょうどウィールの山一つと合致するような形です。

横から

そしてこちらが先端が分かれていないタイプ。

国産目付ゴテはこちらのタイプが多いと思います。ウィールでつけた目印一つに合致する形状をしています。

先端がとがっている

 

二又のダブル目付ゴテをウィールに合わせるとこの通り、ピッタリ合致します。(若干の隙間はウィールのギザが円周上についているせい。山の勾配角度は異なりますが辺の長さはピッタリ合います。)

ウィールとピッチがあっている(8番)
細かいウィールと目付ゴテ(14番)

このダブル目付ゴテはウィールの番手ごとに対応する同番手のものがあるので、細かさが変わってもピッタリ合致します。

ウィールと分岐なし目付ゴテ

先端が分かれていない目付ゴテはこんな風に合致します。ただ、こちらのシングル目付ゴテはあまりサイズは関係ないのでこれ一種類です。(Starko tools)

その他国産のもので二種類ほどシングル目付ゴテを持っています。

国産目付ゴテ
先端が細め(右は加工してL字の先端のみとがらせてます)

ダブル目付ゴテはウィールとサイズが合致しているので正確に目付を入れやすく最近はダブル目付ゴテを使うことが多いです。

また、ダブル目付ゴテはウィールを使わなくても、付けた溝に順々に合わせていけば、(ある程度)正確に目付をすることが可能です。

ウェルトに使ってみる

実際にウェルトの端材にウィールと目付ゴテを押し当てて使ってみます。

軽く表面を濡らしたウェルトにウィールを転がします。

ウィールを濡らしたウェルトに転がす
ウィールの痕

こんな風にウェルトにギザギザのあとが付きます。(出し縫いはこのギザギザに合わせて穴をあけて縫っていきます。)

これだとまだ目付が浅いので、ピッチの合ったダブル目付ゴテをグイグイ押し当てます。

二股の目付ゴテで補完
ウィールの痕に合わせる

すでにウィールでできている凹凸に合わせるように押し当てるとこのようにウェルトに深くあとがつき、三角の山ができます。(12番ピッチ)

目付が深くはっきりする
左12番、右14番

番手を変えてもウィールと目付ゴテで同じように作業できます。

8番ウィールに目付ゴテ
深くはっきりした8番の目付

8番目付はかなり粗めでカジュアルな印象です。さらに目付の幅が広くなると(ピッチが粗くなると)山の頂上が少し丸くなります。

革の厚みと変形深さに限界があるのでピッチが粗くなるほど山も緩やかになります。(谷はいつでもガッチリ入ります。)

8番ウィールの靴

最後に

ブログ始めてから靴づくりネタはまだ少ないのにも関わらず二度も目付について書いてしまうほどにはいつも考えています。笑

先日LIGHTBULBのお二人と対談させてもらった際、靴職人の外林さんは、目付は靴づくりの集大成なんだ、というようなことをおっしゃっていました。

今回のような道具ももちろん大事ですが、そこに至るまでの過程、出し縫い、すくい縫い、吊り込み、中底加工、ラスト作製まで遡るほど色んな要素を積み上げた結果が目付に現れます。

どこをどうしたら綺麗きれいに目付が入るのか、入れやすいのか、1mm以下の微調整の試行錯誤です。

まだまだ、僕は満足いく目付はできていないので靴を作る度に色んな発見があってとても楽しいてすね!

次の靴でも早速試したいことがあってワクワクしています。

ではまた。

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