こんにちは。
先日キッシュの既成靴の1足目が完成しました。
完成時にはいつもウキウキで写真をたくさん撮ります。
Instagramにも写真は投稿していますが、拡大がしにくい、携帯じゃないと見にくい等色々ありますし、
似たような写真が多いからやめとこうと思い、投稿してない写真もありますので、
作った感想やこだわりなどもあわせて改めて完成記事を書くことにしました。
今後も靴が完成するたびに製作のまとめ記事を書く予定です。
製作動画
製作の工程を記録してありますので作業の様子は動画からご覧ください。
- アッパー縫製
https://youtu.be/tEhRTXrs-dE - 木型に吊り込み
https://youtu.be/M-VYIg0lY00 - 中もの(コルクと竹)
https://youtu.be/9zOidepz5cY - コバ磨き
https://youtu.be/Fc1uvzQDmvc - ヒールの積み上げ
https://youtu.be/YpyOorAfLKE - ソール磨き
https://youtu.be/LZ55zjqG6M0 - 磨いて完成
https://youtu.be/YWS4eq26ghI
↓一つの動画にまとめたバージョン
完成レビュー
この靴はムラ感ある革として有名なミュージアムカーフを使いました。
イタリアのILCEA(イルチア)社の革で、実際の商品名はRADICA(ラディカ)と言います。
ネイビーの革で独特の深みを感じますね。
室内で見るときと、太陽光の下でみるときとでかなり印象が変わります。
ボリューム感のある立体的なトウシェイプは「お饅頭toe」と呼んでいます笑
薄く長いシャープなつま先はもちろんかっこいいのですが、少しボリュームを持たせて長くしすぎないつま先は光の加減が絶妙で、見ていても履いていても癖になります。
キッシュのスタンダードラストはこのお饅頭トウがデフォルトです。
つま先に次いで木型の話をすると、
一の甲(指の付け根あたり)はかなり低いです。(薄い)
そこから二の甲(足の中間あたりの骨突起部分、真ん中の紐穴部分)にかけて急激にせりあがります。
こういった形状は履き心地に影響するのはもちろんのこと、ダイナミックな曲線が存在感を生みます。
新幹線の「つばさ」にどことなくフォルムが似ています。
実際には足の形はそんなにダイナミックではないのですが、これが木型と足の関係性の面白いところです。
ちなみにこのno.001のサイズは
26.0cm UK7.5
程度です。
また、この靴が最も合うだろう足の特徴は
- 回内気味である(内側に足が倒れ土踏まずアーチがつぶれ気味)
- 踵の骨が小さく肉付きが少ない
- ボールジョイントの幅は普通かややある
- 甲の高さ(二の甲)は普通かややある
が挙げられると思います。足の形は千差万別なので上記に当てはまらなくても足にフィットすることはあると思いますが、その逆も然りです。
結構攻めるところを攻めてガッチリ作ってあるので足を選ぶのは確かだと思います。
ヒールはフルハンドらしくアッパーに密着しています。ヒール部分もアッパーに合わせて青の染料で染めてありますので少しムラが見えますよね。これも太陽光に当たると透けて浮き上がってくる感じです。
ソールは半カラス仕上げ。ウエスト部分は同様ネイビーに染まっています。
ソールの中には竹のシャンクと中もののコルクが入っています。またウエスト部分は意匠的にこんもり盛り上げています。
ソールの仕上げは履くと一瞬で削れてしまいますが、だからこそ美しく仕上げるんですよね。革靴づくりの伝統的な文化だと思います。
ソールはもちろんオークバークなので耐久性はしっかりあります。
出し縫いの糸も同様に青く麻糸を染めて縫ってます。
縫い目のピッチは10spi。一針2.5mmほどの間隔で手縫いしてあります。
この靴の唯一の飾りポイント。
穴があけられたキャップの付いたつま先 Punched toe capです。
パンチングの断面の色が水色なのでコントラストがついて穴飾りが際立ちます。
ライニングの名前の左側に台形の痕がついています。
この部分は木型の空洞部分にあたり、ライニングの素材によっては痕がついてしまいます。ちょっとしたことですが要改善ポイントかもしれません。(使用には全く影響ありません)
シューツリ―と靴の袋も製作しています。
シューツリーは木型の形に沿ったもので、少しきついくらいぴったりはまります。ツリーの色や金具、紐など靴に合わせてそれぞれ組み合わせて作ります。
この靴はナチュラル色に蜜蝋仕上げ、真鍮リング、青い帯紐です。靴袋は紺色。
感想
ということでキッシュの1足目が作り終わりました。
僕はまだ製靴を始めて2年たっていないのに、(年数は関係ないですが)完成を楽しみにしてくれる皆さんがいることに驚きうれしく思います。
これまで動画や写真で見ていただいたように靴として完成度は一定レベルに達していると自負しています。そして製作者としてではなく、一靴好きの立場として客観的に見ても、履くたびに気分が高揚する一足に仕上がっていると思います。(足に合うなら)
ただこの靴は完璧な靴ではありません。
これは今後の製靴人生通して言えることなのですが、僕は完璧な靴を作れることは死ぬまでないと思います。
僕は靴を作るときはいつも、その時持てる最大限の知識と技術を使います。
そうしてその時作れる最高の靴を作り上げると僕の知識と技術はレベルアップします。
もし1年前の自分がこの靴を見たら完璧だと思ったかもしれません。
ただ、今、この靴を見て評価する自分自身は、この靴を作ったことによってすでにレベルアップ済みなのです笑
つまり僕が靴の追究をやめない限り、技術知識経験を積み重ね、理論上永遠にレベルアップし続けることになります。
もちろんその時々で「とてもうまくいった靴」と「なかなか思い通りにいかなかった靴」というのは存在しますがそれらの経験を踏まえてさらにレベルアップしていくはずなのです。
これが完璧な靴(と自分自身で評価する靴)を作ることができない理由です。
このNo.001の靴からも学んだことは多く、すでに次の靴へと生かしています。
ですから ー 先ほどから当たり前のことしか言っていませんが笑 ー 今作った靴と10年後に作った靴は当然完成度は違うのです。
しかし今僕が確実に言えることはこの靴は
今の自分には自信を持てる仕上がりになっていることと、今持てる最大限の力を使って作ったということです。
僕は今後もどんどん完成度の高い靴を作れるようになっていくと思います。
今の靴で物足りなければ待ってください。物足りる域まで上っていきます。
今の靴が欲しいんだと思ってくれる方がいらっしゃったなら買ってください。100時間かけて作った生みの親としてそんなにうれしいことはありません。
なんだか感情がこもって大きな話になってしまいましたが、そういった思いで今後も靴作りに精を出していきたいと思います。
no.003と004の製作も始まっていますので完成まで是非ご注目ください!
それではまた。
コメント
コメント一覧 (6件)
最後の感想、最高ですね。自分は営業職ですがいい時もあれば悪い時もあります。そんな中でも着実にレベルアップしていると、改めて自信を与えてくれる文章でした。
もちろん靴の方もいつかマイサイズを手に入れたいと思っています!それこそ、大幅にレベルアップを感じることができた節目などに。。今後も楽しみにしております!
ありがとうございます。何事も真剣に取り組めば必ずレベルアップするはずですよね。僕の文章にそんな力を感じていただけるとは嬉しいです。大幅レベルアップのその時を僕もレベルアップしてお待ちしています!
改めてかっこいいですね〜
イルチアのラディカはゾンタのミュージアムカーフとどういったところに違いがあるのか気になります
さておき、サイズは26cm相当だったような気がしておりましたが、気の所為でしょうか?
あと、25.5cmなら一般的にはUKではなくUS7.5相当ですかね?UK6.5というべきか、7というべきかは人により様々でなんとも言い難いですが…
まあ数字だけなので、なんでもいいんですけどね笑
地方民なので、いつかケンさんの靴に手の届く方法が考案されることを期待して気長にお待ちしております
ありがとうございます!ゾンタの実物を見たことが無いのですが、写真で見る限り色むらの濃淡がもう少し強い印象があります。使ってみたいですね!
これは失礼しました!ご指摘の通り26cmのuk7.5相当でした、書き間違いです!ありがとうございます。
修正いたしました!今後のやり方は色々試行錯誤しながらやって行きますね!
はじめまして。
過去の記事にコメント失礼致します。
抽選に出されているこちらの靴はウィズはどれくらいになりますでしょうか?
レングスがハーフサイズ大きめなんですがとても欲しい靴なのでウィズ次第では抽選に参加させていただこうかと思いまして。
この靴の特徴を読んだ感じだと履けそうな気もしています。
また、他の靴も基本的には同じウィズですか?
よろしくお願い致します。
こんにちは。
今回の靴は全ておおよそですがE~EE程度だと思います。工業規格にのっとっているわけではないのでおおよそのイメージです。
レングスが大きめでウィズも大きめとなると後足部でつかむ木型ではあるものの、少し緩めに感じる可能性はあるかなと思います。
ご都合あえば試着会もご予約ください!
よろしくお願いします。